野生に返れる楽しさ
表情が変わる川の魅力を伝えたい

Profile

園部 峻久

27歳 観光協会職員(現:自然ガイド
茨城県土浦市出身 2018年移住


「小学校1年生のときの文集で『北海道で自然ガイドをしたい』って書いてたんですよね」。その夢がいま、叶ってるんです、と嬉しそうに話す園部さん。観光協会の事務所がある施設「コモレビ」で、園部さんが川の魅力について語り始めると、目の前がサッと新緑に囲まれた水辺の風景に変わった。小さなころからずっと川を見続けている園部さんにとっての、下川の魅力とは。

interview:2019年6月

園部 峻久

観光協会職員 茨城県土浦市出身

ころころと景色が変わる、表情豊かな下川の川に魅せられて

両親が話すには、僕が小さなころ栃木県日光市に行った時、自然の中でとってもイキイキと楽しそうに遊んでいたそうです。それから「この子は自然の中で遊ぶのが好きなんだな」といろんなアウトドアに連れていってくれるようになって。初めての北海道は、小学2年生の時です。誕生日プレゼントとして、物ではなく北海道に連れて行ってほしいと僕からお願いしたのがきっかけでした。それから毎年、誕生日プレゼントは北海道旅行で、北海道に住みたくて大学を選んだくらいです。念願の北海道暮らしが始まってからは、道内のネイチャーセンターやフリーランスでガイドをしながら経験を積みました。

下川に初めて来たのは、今から4-5年前、より良い川を探しに来た時です。道内の川はいろいろと見て回りましたが、下川のサンル川や名寄川は人の気配がなくて、僕の好きな環境でした。 このあたりの川は、歩いているとカーブを曲がる度に景色がパッと変わるんですよ。川底の様子も砂利から岩盤になったり、砂になったり、崖が急に出てきたり。魚が多いのも魅力ですけど、川を歩くこと自体が好きな僕にとっては本当に楽しくって。釣りだけでなく、歩くだけでも魅力的な川です。

滝に打たれて非日常を

行者にんにくを炙ってその場でパクリ

口に出すと、実現する町。リバーウォークへの挑戦

移住する前は、道内の他の地域に住んでいました。けれどフィールドを移すことに決め、次をどこにしようか探っているときに、ネットで下川町の観光協会の求人を発見しました。で、僕は電話もせずに、直接下川に来てみたんです。ここ、コモレビの窓口で「移住を検討してるんですけど」と伝えたら、隣の部屋からタウンプロモーション推進部の方が出てきて相談に乗ってくれて。

「観光系の仕事がしたくて」と伝えると、その場ですぐに観光協会の事務局長が出てきてくれました。数日後に改めて面接で訪れたときには、そのまま商工会青年部の飲み会に参加させてもらったんです。まだ採用が決まったかどうかもわからないのに(笑)。

移住してから下川で感じているのは、移住者とずっと地域で住んでいる人との距離が近いことですかね。それが居心地よくて。あと、何かやりたいと思ったら口にすると、いろんな人が興味を持ってくれて実現することもあるんです。

僕の場合、6月1日からリバーウォークという新しい観光アクティビティを始めました。これも、いろんな方々にご協力いただいて実現したんです。下川町の川は本当に魅力的なのに、町民も、町外から来た人も、川に触れる機会って少ないんですよ。下川の良さを体感してもらうために始めた企画です。

園部さんのー日

On

04:30 起床
05:00 パンケ川へ釣り
08:30 帰宅、出社準備
09:00 出社。イベントの準備
12:00 みなみ家で昼食
13:00 観光ガイドで川へ
17:30 退社、そのままペンケ川へ釣り
19:00 帰宅、夕食
21:00 就寝

OFF

04:30 起床
05:00 友達と奥名寄へ釣りへ
14:00 昼食、五味温泉へ
18:00 アポロで夕食&釣果報告
22:00 帰宅、就寝

下川町の川の魅力を五感で体験してもらいたい

昨年、リバーウォークのモニターツアーをしたときに、参加してくれた友人が「川って壁だと思ってた」って言ったんです。川って、怖い、大変そう、歩きにくい、みたいな先入観がありますよね。でもいざ入ってみると、それを凌駕する非日常の体験ができるんです。森をガイドする時の道は、笹が刈られてできたもの。一方で、川には道がないんです。自分たち以外の人の気配も一切なくて、あっという間に野生に返れる。

リバーウォークでは、ころころと変わっていく豊かな川の表情を見ていただき、地形の成り立ちや自然についてご紹介していきます。場所によっては化石を拾ったり、岩に埋まったメノウや水晶も観察できるんですよ。もちろん釣りをしたり、ゆったりと川辺でティータイム……という過ごし方もできます。

僕は、とにかくたくさんの人に川の魅力を知ってもらいたいんです。今回の企画はその第一弾。今後は、冬のリバーウォークもやってみたいなと思ってますし、川に飛び込んだり流れたりと全身で川を感じるアクティビティの準備も始めています。下川の魅力はたくさんありますが、まだまだ紹介しきれていません。リバーウォークで下川の新しい一面を見て、体験してもらいたいと思っています。

Text:Rie Kuroi Photo:Seiji Kazui

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