いつでもチェンソーアートのことが頭にあります。
誰もやったことのない表現や技術で作品をつくりたい。

Profile

児玉(木霊) 光

46歳 下川町森林組合、森林管理員・ チェンソーアーティスト
愛媛県出身 1999年移住


撮影に伺った日は、ちょうど下川神社に奉納する干支のチェンソーアートを制作中だった児玉さん。「今年で、12体全部そろうんよ」と親子のオオカミの形をした作品を見せてくれた。 いまやチェンソーアーティストとして世界的に有名な児玉さん。下川町の個性的な住民がもたらす、ちょっと前のめりの提案が、児玉さんを下川とチェンーアートへ導いた。

interview:2018年2月

児玉(木霊) 光

下川町森林組合、森林管理員・チェンソーアーティスト 1999年に移住

林業には職人の技が詰まっている

生まれも育ちも愛媛県松山市の街中でしたが、田舎暮らしに憧れて、結婚後に松山市のはずれに移住しました。「そこで求人があったから」程度の気持ちで林業に就労したのですが、いざ始めてみるととてもおもしろかったんです。木を切る、植える、育てるというシンプルな仕事の中に、土質や地形の見極めや草の刈り方、自然災害時の知恵など、職人の技がたくさん詰まっていて。同時に北海道への憧れも抱き続けていて、林業の専門誌に掲載されていた下川町に興味を持ちました。そこで、アポなしで森林組合を訪れてお話しを聞かせてもらったんですが、帰ってきてしばらくすると内定通知が届いたんですよ。就職したいなんて一言も話していないのに(笑)。 そのときに、まあ、職や場所を探す手間も省けたし、いいかなと思って移住しました。僕は長男だし、愛媛を離れることに対していろいろ思うところもあったけど、妻が乗り気で、これもご縁かなと思って。4歳になる娘と3人で下川にやって来たんです。

奥深い森に囲まれたアトリエ

冬の早朝は-30℃を下回ることもあります

制作中のオオカミの親子

下川神社に毎年奉納する干支を彫ったチェンソーアート

仕事道具が遊びに使え、遊びの経験が技術を向上させる

来てすぐに、森人類(しんじんるい)という森林ボランティアのサークルに入りました。五味温泉の山に遊歩道をつくったり、都会から人を呼び込む林業体験ツアーの企画・運営をしたりして。友達もすぐできたので、さびしい思いはしなかったですね。その頃、僕が住んでいる近所に、自分の山を気に入った人に開放して、好きなことをさせてくれる人がいたんですよ。ある日、「テレビの取材がくるから、丸太をチェンソーで削ってアート作品を作ってみない?」と言われたのが、チェンソーアートを始めたきっかけです。山でも遊びでも技術が向上できるならいいなと思って。最初は時々チェンソーアートを作るだけでしたが、そのうち毎週末作品を作るようになり、人前でもやるようになりました。

2004年に初めて競技会に出て、2006年に優勝したのを機にチェンソーアートジャパンの契約カーバー(=チェンソーアーティスト)になりました。2008年にオーストラリアの競技会で優勝してからは海外からの招致も増え、今年は世界各国9つの大会で優勝3つ、2位が1つ、3位が3つ。現在も森林組合で働いていますが、海外の大会が増えると長期で休むことになるので、それを承認してくれている職場には感謝しています。

児玉さんの一日

ON

02:00 起床
03:00 アトリエへ行き、作品制作
06:00 家に戻り朝食
07:00 直接、仕事現場となる森へ。町有林の間伐
11:30 車の中で昼食と昼寝
12:30 仕事現場へ戻る
16:00 冬はこの時間に仕事終了(夏は17:00)
16:30 家の除雪と、ストレッチや入浴など体のメンテナンス
19:30 夕食
21:00 就寝

OFF

06:00 起床、朝食
08:00 アトリエへ。道具の手入れ、次作に向けて丸太のセッティング
12:00 昼食、のんびりすごす
14:00 遠方から週末帰省していた息子を送り届ける
18:00 帰宅、自宅で映画をみるなど
19:30 夕食
21:00 就寝

ひと工夫して、ワクワクしながらやることがモチベーション

森の仕事をしている間も休日も、いつでもチェンソーアートのことが頭にあります。誰もやったことのない表現や技術で作品をつくりたいし、現在の半分の時間で、いいものを勢いよく作りたいと思っていて、どうしたらできるかなと考えているんです。仕事でも同じですが、「どこを改善したらいいかな」「こうしたらどうなるかな」と考えるとワクワクします。いつでも、ちょっとずつ工夫して改善していきたいんですよね。 こうやって「なにかやろう」という気持ちを持ってチャレンジし続けるには体力がいるので、これからは運動して身体を整え、心身を保っていきたいと思っています。「歳だから」って言いたくないんですよ。

そうして作品づくりが今の半分の時間でできるようになったら、仕事でもチェンソーアートでもない、違うことをやりたいですね。それが何かは見えていないんですが、生きる目的が一つだと行き詰った時にどうしようもなくなってしまうので。そうだなぁ……、アウトドアが好きな奥さんと2人で楽しめることを、始めたいですね。

Text:Rie Kuroi Photo:seijikazui

移住者へのインタビュー

周りの熱意に導かれ、今度は自分が受け入れ側に

2024.9

地域おこし協力隊制度が始まったのは2009年度のこと。東京出身の田中由紀子さんも、2016年度採用の協力隊として下川町へ移住しました...

田中由紀子さん

東京都出身 2016年移住

Read more...

「ここは他の地域と違う」という直感を信じて

2024.3

下川町は、たまたま流れ着いて気づいたら何年も住んでいるという方が、決して珍しくない気がします。徳間さんも、そのひとり。...

徳間和彦(とくま かずひこ)

1957年釧路市生まれ 2007年 移住

Read more...

誰にも縛られず、できることから始めよう

2023.10

住む場所を決める基準は、人それぞれ。血縁者がいたり、好きな風景があったり、お気に入りの店があったり、...

塚本あずささん

アロマセラピスト埼玉県出身 2019年移住

Read more...

いつのまにか“しっくりくる暮らし”にたどり着いた

2023.07

筆者が下川町に移住し、まだ数日しか経っていない頃。「美桑(みくわ)が丘」と名付けられた森で、薪小屋を作るワークショップがあると聞き、...

成田菜穂子さん

NPO法人森の生活 東京都出身

Read more...

楽しいことを見つければ 、人も未来もつながっていく

2023.03.29

「「新しいことを始めるのに、遅すぎることなんてない」。口で言うのは簡単です。年齢にかこつけて「今更やっても仕方ない」...

尾潟 鉱一さん

大阪府出身 1984年移住

Read more...

下川は、都会とは違うスイッチが入る町

2023.03.29

「人には、風の人と土の人がいる」という話を聞いたことがあります。ひとところに留まり、その土地での暮らしを味わい根を張る覚悟を持つ人...

吉岡芽映さん

北海道上士別市出身 2020年9月移住

Read more...

型にはまらずやってみよう納得感のある暮らしを求めて

2022.03.29

新型コロナウイルスの蔓延による、あらゆる行為の自粛は、私たちの暮らしを見直す、忘れられないきっかけの一つになりました。...

山本菜奈さん/林将平さん

神奈川県出身 東京都出身

Read more...

下川町に来てから、自分の世界が広がった

2022.03.29

人口の少ない地域での暮らしは閉鎖的、というイメージは、決して珍しくないのではないでしょうか。声優の専門学校に通っていた佐藤飛鳥さんは、...

佐藤飛鳥さん

25歳 埼玉県出身 2017年移住

Read more...

できるだけどんなことにも参加して、地域に恩返しをしたい

2021.11.30

下川町に暮らす女性たちの移住のきっかけは、結婚や転職など人それぞれ。山崎春日さんは下川町の隣町の名寄市で育ち、結婚を機に...

山崎春日さん

45歳 新聞屋、ラジオパーソナリティ

Read more...

いつも誰かが、楽しい道へ導いてくれる

2021.3.25

下川には、手作りが好きな女性たちが作品を持ち寄り、イベント出展などをする「森のてしごとや」という有志のグループがあります...

橋本光恵さん

橋本光恵 44歳 旭川市出身

Read more...

活かしあうつながりのなかで“生産”する暮らしを

2021.1.11

筆者が下川に移住する前、「モレーナ」店主・栗岩さんの記事を、何度も読みました。絵を描きながら海外を旅して、...

富永夫妻

富永紘光 2012年移住 /宰子 2017年移住

Read more...

持続可能な社会を目指して、下川町にたどり着き暮らし続ける理由

2020.6.1

取材をしたのは、2020年3月末。コロナウイルスの感染拡大による自粛要請が、日本各地へ広がり出した、ちょうどその頃です...

奈須憲一郎

46歳 1999年移住 愛知県名古屋市出身

Read more...

自分の気持ちに正直に、ていねいな暮らしを目指して

2019.12.20

生活の中の「今の暮らし、しっくりこないな」という違和感は、時折心の片隅に一筋の煙のように立ち上がってきます...

藤原佑輔

35歳 札幌出身 2017年移住

Read more...

会社と家を往復する忙しさを脱し、農業の道へ

2019.9.30

「子牛、見ていきますか?」と誘われて牛舎に入ると、かわいらしい子牛たちが私たちを見上げ、近づけた手をぺろりと舐めた...

吉田公司

58歳 網走市 2009年移住

Read more...

暮らしと経営、長く続けられる酪農業を

2019.9.20

「子牛、見ていきますか?」と誘われて牛舎に入ると、かわいらしい子牛たちが私たちを見上げ、近づけた手をぺろりと舐めた...

豊田さんファミリー

2014年移住

Read more...

野生に返れる楽しさ、川の魅力を伝えたい

2019.6.11

「小学校1年生のときの文集で『北海道で自然ガイドをしたい』って書いてたんですよね」。その夢がいま、叶ってるんです、と嬉しそうに話す...

園部峻久

2018年移住

Read more...

50年以上愛されてきた卵を通して、新しい幸せを

2019.4.2

「楽しみは、自分で探さないとね」と村上さんがつぶやくと、能藤(のとう)さんはふっと笑った。50年以上の歴史がある「阿部養鶏場」を札幌の...

あべ養鶏場

2016年移住

Read more...

素直に飾らずに暮らせるのがいいんです

2019.3.25

雪にめがけて走り出した息子さんをやさしい眼差しで見守りながら「この子は下川生まれですからねぇ」とつぶやいた。...

高松峰成/慧

2016年5月移住

Read more...

仲間とともに「家具乃診療所」を始めたい

2018.11.19

「一の橋に来てから、人のことを『人間』って言うようになったんですよね」。 木屑が雪のように降り積もる工房の中で、河野さんは「なんでだろう」...

河野文孝

41歳 埼玉県川越市 2016年移住

Read more...

自ら何かを生み出し、恩返しもしていきたい

2018.10.26

「このあいだ作ったフサスグリのジュース、飲んでみます?」 真っ青な空と、緑が映える木々をバックに、「cosotto, hut」は、まさに「こっそりと」...

山田香織/小松佐知子

山田さん福島県出身/小松さん岩手県出身

Read more...

小さいころに食べた下川のおいしいフルーツトマトを作りたい

2018.8.24

研修ハウスで今年から始めたフルーツトマトを眺めながら、直紀さんが「これはちょっと難しい品種で、まだまだうまくいかないんですよね...

睦良田 直紀/まい子

名寄市出身2017年に移住

Read more...

物事を俯瞰する。意志にとらわれすぎず生きていきたい。

2018.5.21

「最近は・・・なんだか落ち着かないですねぇ」 麻生さんはゆったりとした口調でそう言いながら木のカップにコーヒーを注ぎ、...

麻生翼

NPO法人代表理事 愛知県出身

Read more...

誰もやったことのない表現や技術で作品をつくりたい。

2018.2.26

撮影に伺った日は、ちょうど下川神社に奉納する干支のチェンソーアートを制作中だった児玉さん。親子のオオカミの形をした作品を見せてくれた。...

児玉(木霊)光

チェンソーアーティスト 愛媛県生まれ

Read more...

minami

旅をしたら、地元の名産が食べたいでしょう。下川ならではの店をやりたい

2017.11.2

「どうぞ、いらっしゃいませ」 開店前の忙しい時間、私たちが訪れると、仕込みの途中だったのか白い前掛けを外しながら調理場から出てきてくれた...

minami

南 匡和

飲食店経営 札幌市生まれ

Read more...

komine

夢見てきた田舎暮らし。健やかでおいしいトマトを一生つくり続けたい。

2017.08.10

「この箱詰めが終わるまで、ちょっと座って待っててくれる?」訪れた私たちをちらっと目視したあと、笑顔のままで目線を手元に戻しつつ...

komine

中田 豪之助/麻子

東京都出身 2005年に移住

Read more...

komine

だれもが物々交換をしているような、地域と自然と経済を生み出したい

2017.07.11

「これ、どうぞ。今日のおやつです。妻が作ったのでみなさんも食べてください」そう言って差し出されたのは、ヨモギの蒸しパン。

komine

小峰 博之

福岡県生まれ 1998年に移住

Read more...

森の恵みを作品にする。「つくる」という人生を送りたい

2017.03.24

このあいだ、町役場から連絡が来て。町有林で出たパルプ材の中で欲しい木があったら、森に来て印をつけといてって言われてね。

usuda

臼田 健二

静岡県出身 2015年に移住

Read more...

スポーツ、健康、医療、福祉。下川だからできる連携を生み出したい

2017.03.10

「あ、雪が降って来たねぇ。じゃあ、外に行ってみようか?」 和也さんの声に、待っていましたとばかりに「うん!」と答える娘さん...

takemoto-002

竹本 和也/竹本 礼子

2008年に移住

Read more...

visual-interview-03

終わりのない、答えのでないものを、ずっと考え続けていきたい。

2016.12.30

北海道に憧れて、大学卒業後に北海道新聞の記者として移住してきた荒井さん。道内を飛び回る充実した日々の中で、ふつふつと沸いてくる...

荒井 友香

茨城県出身 2015年に移住

Read more...

visual-interview-02

森のあるライフスタイルを、私たち自身が体現していきたいんです。

2016.12.22

二人が出会ったのは2004年。すでに下川に移住していた大輔さんの勤め先である下川町森林組合に、真理恵さんが興味を抱いて...

田邊大輔/真理恵

2004年に移住/2007年に移住

Read more...

旅をして、自然の中で暮らす。自分のやりたいことをやると決めたんです。

2016.11.10

下川に移住を決めたのは、世界一周の旅の最中でした。もう5年も終わりのないような旅をしていたのですが、日本に帰ろうと思って。

_mg_7687

栗岩 英彦

静岡県出身 1991年に移住

Read more...