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スポーツ、健康、医療、福祉。
下川だからできる連携を生み出したい

Profile

竹本 和也/礼子

竹本 和也 36歳 下川町教育委員会・下川ジャンプ少年団、下川商業高校スキー部コーチ・全日本スキー連盟ノルディックコンバインドジュニアコーチ 北海道和寒町出身 2008年移住
竹本 礼子 44歳 社会福祉協議会勤務・健康運動指導士 静岡県出身 2009年移住


「あ、雪が降って来たねぇ。じゃあ、外に行ってみようか?」 和也さんの声に、待っていましたとばかりに「うん!」と答える娘さん。肩車をしてもらいながら、ゲレンデに向かっていきました。竹本夫妻のお話しを伺ったのはスキー場に隣接したロッジ。スキーを終えた中学生たちが笑い声をあげ、窓の外には仕事あがりにボードを抱えてリフトに向かう壮年の男性。多くの著名なスキー選手を育ててきた下川町には、スポーツと健康を軸に「人の幸せ」にアプローチする夫婦がいます。

interview:2017年3月

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竹本 和也/礼子

竹本和也 北海道和寒町出身 / 礼子 静岡県出身

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どうしてこんなに、あたたかい人が多いんだろう

和也:私が和寒町から下川に来たのは高校生の時で、スキー留学という形できました。世界で活躍する選手を輩出していて、いいコーチがそろっている下川町でトレーニングを積めるというのはうれしいことでしたね。中学生ぐらいだったか、初めて葛西(紀明)選手に会ったとき、近づきがたかったのを思い出しました。当時からすでに有名でしたし、オーラが強くて近づくことができませんでした。とっても気さくな方なんですけどね。 卒業後は滋賀県の実業団に入り、コンバインド(ジャンプとクロスカントリの複合競技)のプロ選手として6年間活動していました。 改めて下川町に戻ってきたのは2008年です。引退して北海道に戻ってきて、最初は千歳に移住と思っていたのですが、また下川に戻ることができました。

礼子:そうなんですよ。私は千歳に嫁ぐんだと思っていたら、いつの間にか下川に変わっていて(笑)。私たちの出会いは神奈川の病院なんです。プロ選手だった彼がケガで入院した病院で、私がトレーナーとして働いていて。彼の引退後は北海道についていくことは承知していたのですが、下川町なんて全然知らない街で、行く前にネットでいっぱい検索しました。

和也:下川町でスキージャンプやノルディックコンバインドを指導できるコーチを探していて、私も「スキーで得た経験はスキーで生かしたい」と思っていましたので大変うれしかったです。現在は高校生7人、中学生5人、小学生2人、幼児1人のコーチをしています。下川町の環境は世界を比較しても大変よく、街の近くにジャンプ台、スキー場、クロスカントリーコースがまとまってありますので、ジュニア選手の育成にはうってつけですね。あと、下川町からはジャンプでは嶋宏大さん、岡部孝信コーチ、葛西紀明選手、伊東大貴選手、伊藤謙司郎選手、伊藤有希選手とノルディックコンバインドでは加藤大平選手ら、多くのオリンピック選手が生まれていますが、彼らをはじめとするOBたちのサポートがすばらしいんですよ。スキー道具はとても高価なのですが、彼らが使っていたものを提供していただいています。葛西選手がかつて身につけていたジャンプスーツはいまも現役。定期的に下川に訪れてくれますし、彼らの地元愛は強いですよね。子どもたちにとっても励みになります。

礼子:下川の人はあたたかいですよね。私も子どもが産まれるとき、近所のおじさんおばさんが、本当に親身になってくれて。娘は冬生まれなんですけど、その時期は夫のハイシーズン。下川にいないことが多かったので、「陣痛が始まったら、夜中でもいつでも電話してね!車出すから!」って町内の何人に言われたか(笑)。でも、不思議と押しつけがましくないんです。

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子どもの体操教室

礼子さんが運営している休日に行われる体操教室は、下川町の子ども達の基礎体力向上に。

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真剣で熱心な指導

和也さんは下川町の高校生7人、中学生5人、小学生2人、幼児1人にスキージャンプやノルディックコンバインド競技のコーチです。

スポーツと健康と医療がもっとつながる街にしたい

礼子:私はいま、社会福祉協議会で経理事務をやりながら、休日に子どもの体操教室や大人向けのエアロビクス、地元や近隣町村の老人クラブなどでエクササイズを教えたりしています。高校時代はフェンシングをやっていて、大学に進学して管理栄養士になりました。卒業後は病院でさまざまな仕事をしていましたが、終末医療にも携わっていて、末期がんの患者に最後に食べたいものを聞いたりもしました。その経験を通じて、食事も運動も、患者さんの選択肢をもっと増やせるようになりたいと思い始めました。そこで視野を広げ、病院やリハビリ施設、スポーツクラブなどで、さまざまな経験を積んできました。 現在は医療・栄養・運動を連携させていきたいと、いろいろ模索をしているところです。

和也:妻とは、身体や健康、運動の話をいつもしていますね。私の目標は下川ジャンプ少年団・下川商業高校スキー部からまたスキージャンプやノルディックコンバインドでオリンピックに出場させたいです。

礼子:うん、そのためには子どもの基礎体力をもっと底上げしないとね、といつも言っています。昔は運動が得意な子がスキージャンプをやっていましたが、いまは外で遊ぶ機会やいろいろな運動をする機会が減ってきているんですよね。だから、少年団の子でも意外にできないことが多くて。北海道の子どもの体力・運動能力の低下はよく言われていますが、それは下川も同じ。基本的な運動神経や体力がついていない状態で、ジャンプやサッカーや野球を始めてしまうと、ケガにもつながります。それを解消しようと、子ども向けの運動教室を始めたんです。

和也:最近は様々な運動や競技スポーツをする子供たちが減っています。でも本当は、小さいころからやったほうが伸びしろが大きいんです。 様々な運動をすることでバランス感覚や、瞬時の判断力を養います。 また、競技スポーツはその競技の練習だけではなくて、日々の生活習慣や大会に向けての準備、目標に向かう過程など、自分で考え・整えていくことがたくさんあります。そういう意味でも、できるだけ早くから多くの運動やスポーツを経験し体験することで選手は勿論、人としての成長の伸びしろが大きくなり、将来社会でも柔軟に対応でき活躍できる人になるかと考えています。 様々なスポーツがある中で、いろいろな地域の子供が下川町のスキージャンプやノルディックコンバインド競技を選び活躍してくれたらうれしいですね。

礼子:活動していて、手を差し伸べたいところがたくさんあってやりがいを感じています。私が資格を持つ「健康運動指導士」は道北にはまだまだ少ないですし、ネットワークも作っていきたい。最近はスポーツ指導者交流会に呼んでいただいたりして、少しずつ動きが出てきました。神奈川や静岡にいたころと違って、下川は小さな町なので、町民の顔も役場の仕事や動き方もよく見えるので、おもしろさがありますね。

竹本家の一日

ON

06:00 和也・娘が起床、除雪をしながら雪遊び
07:00 礼子起床&朝食の準備。家族で朝食
08:30 和也出勤。スキー遠征の計画書の作成
09:00 娘を幼児センターへ届けて礼子出勤 地元の老人クラブで「運動と栄養」をテーマに講演会
12:00 家に戻って夫婦で昼食
13:00 和也:町内で開催するスキー大会等の準備、受付、資料作成など
礼子:社会福祉協議会で事務作業
16:00 礼子:退社、娘を迎えに行き、スキー場で娘と雪遊び 和也:スキー場で下川ジャンプ少年団の指導
19:00 夫婦で帰宅、夕食、入浴など
21:00 娘が寝る前に家族でストレッチ
22:00 就寝

OFF

03:00 遠征の日。和也が起床して朝食
04:00 少年団の子どもたちを連れて遠征先へ出発
08:00 起床。朝食、掃除
10:30 礼子:子どもの体操教室へ
12:00 昼食
14:00 礼子:公民館でのゴスペルの練習へ
18:00 夕食
19:00 礼子:娘と外遊びなど
21:00 就寝
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仕事も趣味も同じ。好きなことをやらせてもらう

礼子:基本的に運動についての情報収集が大好きなので、休日は本やインターネットで勉強していることが多いですね。あとは、札幌や旭川にいろんなレッスンにいったり。下川では週末も子どもを預ける場所があって、お母さん同士のつながりも濃いし顔も見えるので、サポートしあえるんです。自分の体調が悪いときに子どもを見てくれたり、代わりに迎えに行ってくれたりとか。田舎って、人と人のつながりが密すぎて面倒くさいというイメージがあったんですけど、下川はその距離感がいいですね。

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和也:あと、二人ともとにかく運動が好きなんで、いつも身体を動かしていたいんです。下川にはポタリング(自転車で気軽にお散歩する)の会があり時間が合えば参加しています。この会、なぜか馬もいて一緒に移動するんですよ(笑)。スポーツもスキーも、仕事であり趣味でもある。子どもたちが成長して家族も父兄も応援していただいている方も皆喜んでいる姿を見ることはが私の一番のやりがいと喜びです。

礼子:そうそう。好きなことをやらせてもらって、自然があって、おいしいものを食べて。本州にいたときには、オンとオフが一緒になって忙しくなると、「わー!」となってストレスにつながっていましたが、いまはそういうことがないですよね。オンでもオフでも、身体を動かしてリフレッシュできるんです。

Photo:seijikazui Text:Rie Kuroi

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