睦良田 直紀/まい子
睦良田直紀 北海道名寄市出身 / まい子 北海道名寄市
子育てと両立できる農業研修と、暖かいサポート
直紀「下川に来る前は、隣の名寄市で会社員をしていました。工場だったので、3交代のシフト勤務や後半はデスクワークが中心でしたね。身体を動かしながら働きたいという想いや、トマトがとても好きで、農業をやってみたい、トマトの生産者になりたいという想いが少しずつ募っていって、今に至ります」
まい子「彼、トマトが本当に好きなんですよね(笑)。『作りたい』というところまでたどり着いてしまうなんてすごいですよねぇ。初めて、農業を始めたいと聞かされた時には驚きました。子どもも生まれたばかりでしたし、会社員からいきなり農家になるなんて無理だと思っていたので、まずは農業法人など、安定して毎月お給料が出るところに行くんだったらいいよ、と話しました。」
直紀「初めは余市の農業法人に就職したんですが、半年で戻ってくることになりました。実際にやってみて、学びもたくさんあったのですが、僕自身は量よりも質を重視してトマトをつくりたいなという想いが高まって。あと、新しい職場と慣れない仕事で忙しくて、イメージしていた暮らしとは少し違ったんです。
まい子「そんな状況で、下川町の農業研修制度の話を知り、前向きに検討し始めました。下川がフルーツトマトの産地だというのも知っていましたし。といいつつ、いきなりは決められなったので何度か下川に足を運んで。研修中の方や数十年前に研修を受けて現在は就農しているベテランの方にもお話しを聞かせてもらいました」
直紀「妻も一緒に研修生になる予定ではいたのですが、子育てを優先したいという思いが強く、その両立についてなどもじっくり聞きました」
まい子「役場の方を始め、いろんな方々に『子育てを優先しても全然大丈夫だよ』と言ってもらえて、とても安心しました。初年度は先輩農家さんの元で研修を受けるんですが、役場が子育てを優先させても大丈夫な研修先の方を選んでくださったようです」
役場担当「子どもは宝ですからね。旦那さんがきちんと研修できていれば、後で教えながら協働できますから。「子どもがいるから無理」っていうのはないですよ。むしろ歓迎です」
自分たちの数年後の姿がリアルに見えてきた
まい子「私たちは2017年2月に移住して研修に入り、現在は2年目になります。子どもは下川町の幼児センターに通っています。それも、3月に相談して4月にすぐ入所。ニュースで都会の待機児童問題をよく聞くので、それに比べると信じられないくらい早いですよね。夫はじっくりと研修し、私は研修と子育てを両立させながら、夫のサポートをしています。
直紀「下川の研修制度で助かっているのは、2年目にこの研修用ハウスで実際に自分だけで野菜を育てることができる点ですね。1年目は農家さんの元で研修しますが、8:30~17:00と仕事の時間が決まっていて、休日も週に1回あります。けれど実際に自分で独立してやるとなると、休みなんてない日が続いたり、朝早くから作業をしなければいけないこともあります。1年間、先輩農家さんの元で修行しながら教えていただいたことをもとに、2年目に自分たちだけでやってみると1年目は気づかなかった大変なことや分か らないことがたくさん見えてくるんです。」
まい子「先輩農家さんの横にいて1年過ごしたことで、トマトを育てる大変さを見させてもらえたのがとてもよかったです。自分たちの3年後、5年後のイメージがつきました。それまで、農家さんの仕事が具体的にどういうものなのか全く知らなかったのですが、天候や作物の育成状況、作業の段取り、お手伝いに来てくれた方へのサポートなど、とにかく頭と身体を両方使っていく、難しいお仕事なんですよね。」
直紀「この地域には共同で利用できる育苗施設で他の農家さんと仲良くなれたのもよかったです。わからないことや不安なことが出たときには、近所の農家さんのところに話を聞きにいって、教えてもらっています」
睦良田夫妻の一日
ON
05:00 | 直紀|起床&朝食、ハウスへ |
---|---|
07:00 | まい子|起床して朝食 |
08:30 | まい子|子どもを幼保センターへ送ってハウスへ |
09:30 | 農協へ出荷、その後も2名でハウス作業 |
12:00 | 家で昼食 |
13:00 | ハウスで作業 |
15:30 | まい子|娘を迎えに行って家へ |
19:00 | 直紀が帰宅して家族で夕食 |
22:00 | 就寝 |
OFF
08:00 | 3人で朝食 |
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09:00 | 直紀|庭の除雪、まい子|家事 |
12:00 | 昼食 |
13:00 | 子どもと雪遊び |
15:00 | 地元の寿スーパーでお買い物 |
16:00 | 家でのんびりとテレビを見たりする |
18:00 | 夕食 |
23:00 | 就寝 |
誰が食べても「おいしい」トマトをつくりたい
まい子「もう少ししたら、街中に引っ越すんです。来年の就農に向けて農地も見つかって」
直紀「家も農地も、役場の方がかなり尽力してくださり、無事決まってよかったです。これからは来年に向けて営農計画を作ったりして、就農への準備を進めていきます。小さいころ食べた、下川のおいしいフルーツトマトの記憶を自分でも創り出していきたいですね」
まい子「私は、贅沢はしなくていいので、娘がしっかり育てられるような農家になりたいかな。あと、こんなにいろんな方にサポートしてもらって始めた農業なので、次の世代につないでいきたいですね。まだだいぶ先の話ですけど。」
直紀「そうだね。僕もすごく大きな夢があるわけではないんですが、ただ、誰が食べてもおいしいトマトをつくりたいです。糖度がいくつあればいい、とかそういうことではなく、『おいしい』と思ってもらえるものですね。丁寧に、質のいいものをつくっていきたいです」
まい子「子どもと一緒に、丁寧に、楽しく農業をやって生活していけたら。下川は子どもが参加できるお祭りや行事も多いですし、幼保センターもとても良くて、子育て環境がとてもいいんです。子どもを豊かな環境で育てながら、農業をやっていきたいと思っている方にはぜひおすすめしたいですね」
Text:Rie Kuroi Photo:seijikazui