【一般財団法人下川町ふるさと開発振興公社】理事長 高橋 裕明

一の橋出身。高校を卒業後、下川町役場に就職し、以来さまざまな部署を経験した後、平成19年から平成27年までは副町長を務める。その後一般財団法人下川町ふるさと開発振興公社の専務理事を経て、公社理事長に就任。


アレカラ
過去を振り返って、楽しかった出来事でも、大変だった出来事でも、何か印象に残っているものを教えてください!

やっぱり平成の合併問題。町民とさまざまな議論を進めた結果、「下川町」としてあり続ける単独の道を選択したのが印象的でした。この時の気概を示すものが『地域自律プラン』と言って、協働のまちづくりや、産業の振興、財政が中心となった計画でした。中でも、「協働のまちづくり」を体系立てるための『自治基本条例』の作成に携われたのは思い出深いです。それまでは、行政が企画立案したことを議会に提出する前に「審議会」でチェックしていました。しかし『自治基本条例』では、審議会メンバーだけでなく一般の町民の方々向けにも説明会を開いて、幅広い意見を求めるようになりました。いろんな意見を踏まえて政策を実施する今の行政運営は、ここからきていると思います。

下川町役場は、前例がないことでも実行に移す積極性のある職員が多いのが、印象的です。高橋さんが役場に入られた当時は、どうでしたか?

恥ずかしい話ですが、当時は私たち若い職員はただ与えられた仕事を淡々とやっていました。契機となったのは、昭和56年頃。下川町の過疎率が北海道で1位、全国で4位になり、民間では万里長城やアイスキャンドルミュージアムなどが行われ、行政では「ふるさと運動」と呼ばれる取り組みが活発でした。この時私自身も、何かできることはないだろうかということでいろいろな地域行事を手伝っていました。私が副町長をしていた頃は「最初からできない理由を探すよりも、まずやってみてできなかった理由を探る」、若い職員にそう指導するのが、私の方針でした。

イマダカラ
今の下川町民や役場職員の自治に対する関心について、高橋さんはどうお考えですか?

平成の大合併を契機に町民や役場職員の自治意識が変わってきて、平成10年には、一部の町民や役場職員で「下川町産業クラスター研究会」が発足して、新しい産業の創出や地域の活性方法など、研究や検討を進めていました。この時のグラインドデザインは、平成23年に発表された国の「環境未来都市」の構想をすでに盛り込んでいたのですから、素晴らしいですよね。そんなこれまでの流れもあって、時代ややり方は変わりつつも、町の自治意識は高いと思いますよ。今では若手の役場職員も、日頃からアンテナを張っているので、何か国からの募集があれば、すごい瞬発力で飛びつきます。常に意識を高く保ち、危機感を持って、仕事していますよね。

そんな今、下川町で何かに取り組むことの面白さはどういう部分にあると思いますか?

下川は小さい町ですから、行政やクラスターなどの公的機関に声が届きやすいです。なので、私の勝手な考えですが、Uターン・Iターンの方でもその人のやりたいことに想いがあり、町のためになる内容であれば、町民が素直に受け入れて、行政やクラスターなども事業化を支援してくれることが、一番の面白さだと思っています。都市部では人口規模が多いので、行政に声が届きにくいでしょう。地方自治は、町民に代わっていろいろと施策を打つのが重要なので、町民がやりたいことは、良いアイディアであれば企画立案して議会に提案する。そうあるべきだと思っています。

コレカラ
そんな環境で、やりたい仕事や暮らしを実現しに来る人たちへ、高橋さんはどんなエールを送りますか?

下川に来られる人たちは、さまざまな想いを持っているので、充実した仕事や暮らしを実現する中で、人との繋がりを大事にして欲しいと思います。この町には素晴らしい人材がさまざまな分野で活躍しており、応援団として支援してくれるので、安心して来て欲しいですね。

高橋さんから見て、こんな取り組みがあったら面白いなっていうものはありますか?

役場職員も、商工会も農協も、それぞれ町に対する想いなどを共有しながら、職種に捉われずに、いろんなことに挑戦できたらいいですね。下川町は、交流会などで、仕事場外での異業種の関わりが多いですから。あとは立場に関わらず、積極的に地域活動にも出ていって欲しいです。私も役場の若い職員には、仕事だけをやっていないで、地域の人が頑張っているのだから町に出て行きなさいと、伝えていました。楽しいですよ、地域のいろんな人と交流できますし。あとは「森ジャム」のように、民間からいろんな人や地域を巻き込むような企画が始まるのは、すごく面白いですね。企画力と実行力のある優秀な人材がいる下川だから、できることです。

ココカラ
現在、下川町からいろんなライフスタイルを発信していますが、高橋さんがオススメしたい、下川の働き方や暮らし方はありますか?

個々の感性があると思いますが、一人一人が、自分にとって「豊かさ」を感じられる仕事ができることじゃないでしょうか。そして町の財産である「お金」や「物」だけでなく、「人」も、地域内のいろんな分野で活かされ、循環する仕組みがいいなと思います。つまり、優秀な人が活躍できる場を地域でより多く作る。これも顔の見える距離感がある下川町ならではですね。なおかつ、異業種交流の機会も昔より増えて、気軽に情報共有ができるようになったからこそです。人と人の横の繋がりは、現在、昔以上にありますよ。

なるほど、異業種の情報共有が活発だと、自分の仕事とは違う分野で興味をそそられる取り組みがあった場合、参画するきっかけになりますね。ちなみに高橋さんにとっての「豊かさ」って何ですか?

私にとっては、お金ではなく何かをした時の「満足度」ですね。もちろん100%満足というのは難しいですが、いろんなことで満足感を感じられる機会が下川にはあるので、充実した生活ができますよ。この町は自然も、人も素晴らしく、隣近所の人とも親身な関係が築けますし。

自然とも人とも距離感が近い下川町ならではの満足感ですね。ありがとうございました!