【建設業協会】会長 谷 博之

下川町出身。名寄の青年会議所での活動後、下川町の建設企業の社長に就任。地域のニーズを汲み取って有限会社アフターを設立したり、全道の民間企業をまとめ上げて国の施策に協力したりと、北海道に貢献する活動を広範囲で行う。


アレカラ
谷さんの印象に残っている下川町の大きな出来事は何ですか?

やっぱり、下川町の人たちが発案し、周辺地域に提案していった「北の星座共和国」という道北の広域連携ですね。自分たちが死ぬときに、ここに暮らしていて良かったなと思える町をつくるべきだっていう想いと、それを自分だけじゃなくて、会社の従業員や下川の住人にも理解してもらえる運動にしようっていうことで行ないました。特に印象に残っているのが、平成元年から始めた「北の天文字焼き」という、一つの大きな火文字をつくる冬のイベントです。道北の市町村の点を線で結んでいくと、14市町村で「天」という字になるので。このイベントも、もちろん発案は下川町ですよ。

なぜ下川町はそのように黒子といいますか、何かを始めるきっかけになることが多いのでしょう?

下川は行動力がある人が多いんですよ。最初は、周りから「物好きだね」っていうリアクションがあるかもしれません。でもそういう人が地域に一人でもいないと何も生まれないんですよね。また、自分が良かれと思ってやることを人に押し付けるのではなく、業種や立場関係なく賛同してもらって仲間を作ることが大事です。私は今、仕事で札幌に出て行くことが多いのですが、それも本業を中心に下川町から全道のイニシアティブをとれる人間になろうと思って、行なっています。けれども私が担っている社長業は、本来企業を継続させるための役職なので、ゆくゆくは若い人たちに引き継ぐことを意識して動いていますよ。

イマダカラ
これまでインタビューしてきた方々が、時代の最初の波を作り、これからバトンを渡していく時期になっていると思います。そんな現代の下川で暮らし、働く魅力は何だと思いますか?

現在、私自身は、いろんな人が下川町に来てよかったなと思えるような企業づくり、人づくり、町づくりをやっていきたいと思っています。しかし当然それは自分だけではできないので、下川町を選んで来てくれる若い人をどう支援・応援できるかを考えていきたいんです。一昔前の「移住者」は、ゆったりとした生活がしたい定年後の方が多かったですが、今は若い人たちが成長や働きがいを求めて地域に来てくれていますよね。だから、交通の便が悪くても、遊ぶところが少なくても、若者が来やすく生活に幸せを感じられる基盤を下川町につくれるよう積極的に取り組んでいます。

最近の若者は、いろんな地域を点々としながら、学んだりキャリアアップを目指したりする傾向が強いと思いますが、その中で下川町はどんな役割を果たせるでしょうか?

今の町長をはじめとし、下川町は他の自治体や企業、教育機関など広いネットワークがあって、新しい話があればすぐ飛びついて実行する積極性があります。例えば町長の方針により年に一度実施している大学生インターンシップの受け入れは、当時の他の自治体で実践しているところはほとんどありませんでした。そういう風に、下川町は前例がなくても、学ぶ場作りをすることに非常に前向きです。そして受け入れ先での体験から下川町を気に入ってくれた学生の方々が、帰ってからクチコミで下川町のPRをしてくれます。町としても、外から来てくれた人が短い間でも滞在して、帰った後に、地元の人とは違った視点から下川をPRしてくれるのは、ありがたいですよね。

コレカラ
これから下川町に来られる方々に、谷さんは何を期待しますか?

下川町にいる今の若手が何をしたくてどんなサポートを必要としているのか、私はなかなか分からないんですよ。だから、積極的に意見を聞かせて欲しいですね。普通の話し合いが難しいのなら、飲み会の席でもいいし。下川のためを思って何か計画して、お金がないからって実行を諦めないでほしいんです。思い切って相談するだけで違いますよ。昔、実際に北の星座共和国などで動いていた我々もやりました。「図々しい」と言われることもありましたが、そんなことを心配していたら何もできないんですから。地域に物があっても、やる人がいなければ何も生まれないので、そこは支援や応援をもらうために行動するべきです。

下川町の人は、あくせくしない和やかさがありつつ、活発な人が多い印象です。それは何かがしたくて移住してきた人だけでなく、地元の人たちもそうですよね。

やっぱり移住して来る人や、一旦町の外で暮らし戻ってきた人たちの影響が大きいと思います。外を経験した人たちがやりたいことを自由に始めて、それに触発された地元の人たちもどんどんやっていく。そんな風に、いい意味で外から来た人に引っ張られて能力を発揮できる地元の人が多いのではないですかね。そしてそれをサポートするのが、地元企業です。若い人たちは町の財産ですから、我々の力も借りつつ、都市部の情報や地元にはないアイディアを活かして、どんどん実力を発揮して欲しいですね。

ココカラ
町長の方針にもあるように下川町が幸福度No.1の町を目指すにあたり、谷さんから見て、下川町が誇れるところはどんなところだと思いますか?

この町は、地域というのを言い訳にせず、日本のトップレベルを目指しているところです。例えば会社でいうと、本来都市部より賃金が低い下川のような町であっても、旭川よりも高い給与を目指す感覚です。皆さん、いろんなことをやりたくて外から下川町に来てくれるでしょう。それは本業ももちろんあるだろうけども、趣味が高じて下川を選んでくれる人もいますよね。会社としても、町としても、地域であっても、皆さんが目一杯やりたいことをできる環境整備に尽力していきたいと考えています。

確かに下川町は目指すレベルが高いなと、地域に対して抱いていた印象が変わりました。

下川の基準は東京だと思いますよ。でも、下川町だけですごくなろうと肩肘張るのでなく、ちゃんと周辺と連携をしながら、地域としてやろうという姿勢があります。会社も同じで、地域の会社が広域で連携することで、事業を拡大することができます。そういう意味では下川町には、地域も、企業も、広域で連携し高め合っていく道筋がありますよ。

その姿勢は、「北の星座共和国」が始まった頃から着実に受け継がれていますね。ありがとうございました!